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言いたい放題映画レビュー*エクソシスト
言いたい放題映画レビュー*エクソシスト_f0122159_2181132.jpg美しい構図と素晴らしい演出の数々に、この映画が「オカルト」であることを忘れます。

原 題/ exorcist(73年/米)
監 督/ウィリアム・フリードキン
原 作・脚本/ウィリアム・ピーター・ブラッティ
撮 影/オーウェン・ロイズマン
メイクアップ/ディック・スミス
音 楽/マイク・オールドフィールド ジャック・ニッチェ
出 演/
エレン・バースティン マックス・フォン・シドー 
リー・J・コッブ  ジェイソン・ミラー
リンダ・ブレア キティ・ウィン
マーセデス・マッケンブリッジ(声のみの出演)


この映画が公開された当時、小学生だった私は劇場で観ることが出来ずに悔しい思いをした。日本では初めて(?)R指定が付いたのだ。いち早く観に行った姉は、パンフレットを見せびらかしながら映画を克明に解説してくれたのだが、話しを聞けば聞くほど、恐がり屋のクセに知りたがり屋(観たがり屋)の私の興味は積もっていった。
そして初めてこの映画をテレビで観た時には、もう何度もこの映画を観てきたような錯角さえするほど、この映画に愛着を持っている自分を発見したものです。

間違いなくオカルト映画の先駆けとなった映画である。
が、オカルトとかホラーとか、そういったカテゴリーでくくられてしまえる映画ではない。作品のグレードが高く内容が分厚いからこそ、何度観ても耐えうる映画として、私の映画勧賞史上に君臨し続けている(あぁ大袈裟だね(笑))。

名門ワシントン大学を抱えるアカデミックな街、晩秋のジョージタウンを舞台に、悪霊パズズと二人の神父の闘いを描いた作品。ってのは周知のこと。
しかし、悪霊パズズVSメリン&カラスのシーンは驚くほど僅かだ。悪魔払いが一夜で終わっているのが不思議なくらい、例のシーンは強烈に記憶に焼き付いていたのだから。

映画の大半は、カラス神父の苦悩とクリスの日常に費やされている。
年老いた母親を孤独死させてしまったカラスの呵責は、神父という立場であるにも関わらずその信仰心を揺らがせるに十分であったし、無神論者であり女優として活躍中のクリスは、思春期を迎えた一人娘リーガンの立場を思い遣る日々であり、別れた夫が悩みの種となっている。
女優という立場上、娘がワケも分からぬ状況に陥っても公に助けを求めることが出来ず、大きなサングラスとスカーフで素性を隠し「誰も助けてはくれないの?」と静かに嘆く。

こういった事細かな地盤固めがあるからこそ、悪霊パズズがより邪悪な存在として眼に映り、任務遂行を絶対とするメリンのプロフェッシェナルな姿勢が、実に真摯なものに感じてくるのだ。

身の回りの文明や化学(科学)は、もはや神など必要としない社会を作り上げたが、何をもってしても得られない解答を得ようとした時、化学者達(医師達)はクリスに尋ねる。
「宗教をお持ちですか?」と…。
何度この映画を観ても、毎回この台詞にゾっとする。

数々の名シーンが登場するが、上記フライヤーのデザインともなったメリン神父がタクシーから降り立つシーンは秀悦だ。
霧の中に浮かぶリーガンの部屋。それを見上げるメリンの後ろ姿。演ずるは名優マックス・フォン・シドー。
老けメイクでかなり顔色が悪い(笑)が、彼の圧倒的な存在がこの映画の輪郭をより引き締め、揺るぎないものにしている。

そして、この映画のグレードをより高めているのが、マイク・オールドフィールドによる「チューブラ・ベルズ」だ。これもまた、いま観ると意外なほど僅かなシーンでのみ流れる曲であることに驚かされる。
私的に印象的なのは、映画の前半。
晩秋の街を歩き始めるクリスと共に、この曲が流れ出す。すると一陣の風が吹き、枯葉が踊るようにして見事な螺旋を描いてゆく。
美しい構図と素晴らしい演出の数々に、この映画が「オカルト」であることを忘れます。

監督はウィリアム・フリードキン。
代表作として「フレンチ・コネクション」「恐怖の報酬」「LA大捜査線」があり、アクション作品の印象が非常に強い。また、トワイライトゾーン・シリーズに収められている短編作品「帰還兵」は、私的に強く印象に残った作品だ。短編であるが、ベトナム帰りの兵士の恐怖の描き方が素晴らしく、非常に良く作られた作品なので、機会があったら観て欲しい。。。って、トワイライトゾーンってDVD化されてるのかしら?

後世に語り継がれ、いまなおこの種の頂点に君臨し続ける映画「エクソシスト」。
未見の方、死ぬ前に一度観て下さい(笑)。
by pugslife | 2007-03-07 21:08
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