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言いたい放題映画レビュー*死ぬまでにしたい10のこと
言いたい放題映画レビュー*死ぬまでにしたい10のこと_f0122159_20482213.jpg(余命)2ヶ月でしたい10のこと、を描いた「メルヘン」です。

原 題 my life without me(03年/ カナダ・スペイン)
監 督 イザベル・コヘット
脚 本 イザベル・コヘット
出 演 サラ・ポーリー スコット・スピードマン デボラ・ハリー マーク・ラファロ


ファーストキスの相手と結婚し、若くして二人の子をもうけ、トレーラーハウスで暮らす主人公のアンとその家族。経済的には頼りないけれど、穏やかで心優しい夫。可愛い二人の娘。不満を言ったらキリがないけれど、これが今の自分の身の丈に合った生活。身の丈に合った幸せ。そんな彼女の人生を変えたのは「死」の宣告だった。余命は2ヶ月だという。たった2ヶ月の余命を闘病に費やすくらいなら、余命2ヶ月間で出来る限りのことをしようと「死ぬまでにすべき項目」を綴り始めた…。

この映画は、死に向かうリアリティや絶望感をこれっぽちも描いていません。
そもそも、そういうことが描きたかったワケではないでしょー、絶対に。
ふと思ったのですが、この映画は(余命)2ヶ月を題材にした「メルヘン」なのではないでしょうか?
邦題に「死ぬまでに。。。」という文字があるから「もしもワタシだったら。。。」なんて現実感を伴って観てしまいがちだけど、間違ってもそんなことは考えずに(余命)2ヶ月のメルヘンを楽しみましょうね。

●子供達が18歳になるまで誕生日ごとに贈るメッセージを残す
●子供達に毎日「愛してる」という
●子供達の新しい母親を探す
●思っていることをきちんと話す
●思う存分お酒やたばこを楽しむ
●刑務所にいるパパに会いに行く
●夫以外の男性と交際してみる。。。

あれ?10ないじゃん?なんだっけ?
まぁ、重要なことではないか。。。?

この項目に「夫以外の男性と交際してみる(女として過ごす時間を作る)」がなかったら、この映画はありきたりな出来になっていたかもしれませんね。それは、女として過ごす時間を取り戻すという理由以外に、自分の死後に自分を思い出してくれる人が家族だけでなく、誰にも悟られることのない夫以外の男が居て欲しい…という彼女の利己的な願望に過ぎないのかもしれません。
実は「したいことのリスト」の中で、ワタシが1番共感してしまった(笑)項目ですよ。
倫理的にどうとか、道徳的にどうとか、そんなことを説いてる映画ではなく、あくまでも「(余命)2ヶ月でしたい10のこと」を題材にしたメルヘンですよ、皆さん(笑)。
想像してみて下さい。
お互いに良く知り得ていない異性同士が、知る為の段階を踏んでいくあのトキメキを(笑)!
「ときめくこと」それこそが「生きる」ということではないでしょうか?
経済的に頼り無い夫とトレーラー・ハウスで共に暮らし、子供の世話に明け暮れ、夜間の清掃のアルバイトでなんとか食い繋いできた健気な少女。
そんな彼女が死を目前に「誰にも知られることのない新たな男友達を持つ」と願ったことが、ワタシには実に自然で当たり前のことのように感じられてならないのです。

こんな風にメルヘンとしてこの映画を紐解いていくと、アンが末期患者でありながら毎日動き回っていることや、子供達の新しい母親が偶然にも「アン」という名前であること、その他諸々のことに合点がいくのです。
そして2ヶ月で出来るだけのことを精一杯実行していった結果、彼女亡き後の周囲の人達の人生は孤独ではあっても不幸ではないだろう、と暗示させるラストが、実に爽やかで清々しく見えてくるのです。
それこそが原題でもある「my life without me」なのではないでしょうか?
「末期患者なのに普通の生活を送ってるなんてあり得ないじゃん」の一言で片付けてしまうには惜しい作品ですよ。

レビューを書いていたら、またこの映画のメルヘンに浸りたくなって来ました。
DVD、買っちゃおうかな♪
by pugslife | 2007-03-07 20:50
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